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第29回 患者が増える医院の基本(6)

雪解けが始まり、春らしくなって来た日々ですが、東日本大震災が平安時代(869年)から約1,100年以来の大災害と云われています。東日本の震災された皆様にお見舞いを申し上げます。希望を持って復興することをお祈り致します。

さて、前回はインフォームド・コンセントについて説明をしました。今回は在宅医療への取り組み方の基本を説明したいと考えております。

「在宅医療への取り組み方」

在宅医療は、外来、入院に次ぐ第3の医療として注目されています。特に近年、患者が「生活の質」を重視するようになってきたことに加え、厚生省による診療報酬アップなどの政策誘導を行っていることもあり、在宅医療に取り組む医療機関が増加しています。
本来、在宅医療は、患者の健康状態を総合的な観点から診ることができ、かつ患者の居宅に近い「かかりつけ医」が中心となることが望ましいと思われます。
今後の超高齢社会において、自宅での療養を希望する高齢患者の増大が予想されており、医療が「かかりつけ医」としての機能を持ち、在宅医療実施の主体となっていくことが期待されています。

(医院における在宅医療)

  1. 現在の医療改革の中で、医療機関の機能別体系化が推進されており、医院には「かかりつけ医」としての役割が期待されています。
    在宅医療においても、医院の医師は「かかりつけ医」として、患者と家族の生活全般に気を配り、患者の状態に応じた医療サービスをコーディネートする事が期待されています。また、患者も家族も在宅での療養に多くの不安を持っているため、日ごろの患者の健康状態、家族構成、経済状況などを十分に把握し、きめ細かい対応をすることも期待されています。
  2. 在宅患者は、介護を必要とする場合が多く、社会福祉協議会から派遣されてくるホームヘルパーや訪問看護ステーションから来る看護師など、ケアのチームとの協力も不可欠である。介護や看護のスタッフも、医学的知識や判断を必要とする場合が多く、これらのスタッフに「何かわからないことがあれば相談して下さい」と常に一声かけておくことは、信用を高め、より効果的で効率的な在宅医療の実施に有効である。
  3. 在宅医療への取り組みにより、従来医療機関内にのみあったベットが地域に広がっていると考えることが可能になります。医院にとっては、設備投資や必要な看護師などの人件費なしに、外部に無数の病床をもつことができることになります。
    在宅医療に積極的なかかりつけ医として地域で知られることにより、手術や検査などのためいったん病院に紹介した患者も、戻ってくる可能性が大きくなります。

在宅医療実施のための患者チェックリスト

a、在宅医療を始めるために不可欠な要素

①患者と家族の意欲 患者の病状と求められる在宅医療について理解した上で、それに取り組む意欲が十分にあること。
②介護の負担のカバー 家族と各種福祉サービスの利用を考え合わせて、十分な介護力が確保できること。
③住宅環境 患者が自宅の一室を使うことの他の家族への影響、及び介護機器の導入や住宅改造を考え合わせた上で、患者が残存能力を用いた日常生活が十分に可能であること。
④緊急時の対応体制 患者の病状が急変した時に、素早く対応できる体制が整えられていること。
⑤地域における医療・保健・福祉サービスの連携 患者と家族の生活を支援する多様なサービスが、有効に提供できるネットワークが整っていること。

b、在宅医療を始める前にチェックするべき項目

①患者の日常生活能力 日常生活動作(ADL)および精神的自立度の評価。(高齢者については、厚生省から出されている「日常生活自立度判定基準」がよく使われています)
②家族の理解力と判断力 家族の自己管理の下に実施されるため、説明したことを理解し、的確に実行できること。
③家族の価値観 介護や医療に関する価値観。「他人が家に入ることは嫌だ」、「医師にしか任せたくない」といった価値観が強い場合には、他のサービスを勧めても利用されないことが多い。
④介護者の健康状況 肉体的、精神的疲労度。
⑤患者と家族の負担感及びその理由 介護者の負担感について本当の理由を把握し、対策を考える必要がある。(患者の息子が積極的であっても、配偶者に負担感が大きい場合などが考えられる)
⑥生活パターン 外出の頻度、寝起きの時間、食事の時間など、患者と家族の生活の両立に不可欠な項目。
⑦経済状態・保険の状況 年金とそれ以外の収入、預貯金、保険などの経済状況の概略。
⑧療養環境 療養部屋の明るさ、窓があるか、居宅の衛生環境、家族の衛生意識など、療養環境としての適切さ。

在宅医療の留意点

(1)診療

在宅医療では、患者の身体状況全体について注意深い観察が必要であり、診療の重要性は外来よりも大きい。脱水症状、むくみ、尿失禁等などについては、家族や患者は比較的軽く考えがちなため、ひどくなってから初めて医師に伝えるというケースも多い。状態変化の小さいサインも見逃さないことが必要です。また、精神面の変化も細かく観察すべきであり、悪化の兆候が見られたら、家族に日常的なケアの方法を詳しく聞くなどして、迅速に手を打つ必要があります。

(2)感染症対策

感染症は、再入院の大きな理由となっています。特に近年、MRSAによる感染が大きく報道されており、家族は不安をもっています。予防策としては、カテーテルなどの医療器具を使用する際きちんと消毒するなど、必要なことを家族に十分に指導する必要があります。医師が実演し、家族にも実際に消毒をさせ、適切な処置がなされているか確認しておく必要があります。また、消毒液のストックの確認なども心がける必要があります。訪問看護師、ホームヘルパーなどに対して、衛生管理の徹底を指示することが必要です。

(3)栄養面のチェック

食事は、患者の身体状況を大きく左右します。特にたんぱく質やミネラルの不足に注意しなければいけません。薬の使用によりミネラル不足も大きな課題です。また、水分の摂取不足は見逃されがちであり、特に排尿困難や尿失禁の患者では注意が必要です。
医師は、病状の改善のため、保健師や栄養士と相談の上、適切な食事指導を行う必要があります。

(4)介護者の支援

患者もみならず、介護者の身体的、精神的状況のチェックも訪問診療の重要な目的です。介護者の疲労が蓄積している場合は、1週間といった具合に期間を決めて患者を再入院させたりして、介護者の負担を減らす必要があります。

(5)定期的なミーティング

在宅医療は多くの職種が関与します。情報を共有化して効率的なサービスを提供するためには、定期的なミーティングが必要です。
また、多くの職種が家庭を訪問している場合、家族や患者に混乱が生じることもあります。特に身体の状況や処置方法についての説明の違いは、不安を抱かせることになりますので他職種の医学的知識の不足や誤認などに注意する必要があります。また、入院時と異なり、患者の情報は継続的に把握できません。
そのため、訪問時に必要な情報をすべて集められるわけではありません。医師の前では言えない事を、看護師やOT・PT、ヘルパーなどに話していることがあり、他のスタッフの持つ情報は医師にとっても貴重です。

以上の点を注意して、検討してみてはいかがでしょうか。

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