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第30回 患者が増える医院の基本(7)

札幌では5月春本番を迎え、初夏のさわやかな季節へと移り変わる時期になりました。皆さんはいかがお過ごしでしょうか。

さて、前回は在宅医療への取り組み方について説明しましたが、今回は、診療時間の考え方について説明をしたいと考えております。

診療時間の考え方

これまでの医院は、“9時~5時診療”のところが多いように思われます。平日は午前9時から始めて昼に1~2時間の休憩をとり、夕方の5時か6時まで、土曜日は午前中のみで、日曜日・祝祭日は休みと言う具合です。この時間帯でも患者が十分集まり、診療時間のことはあまり問題にならなかったようです。

最近では、患者サービス向上や増患対策としての狙いから、診療時間の設定にも様々な工夫をするところが出てきています。

「最重視すべきは→地域性」

こうした動きの背景としては、生活ニーズの変化などにより、患者が来院しやすい時間帯が変わってきたことに加え、医療機関同士の患者獲得競争が、激しさを増してきたことが要因です。

できるだけ多くの患者を来院させるためには、その地域の患者が来院しやすい時間帯を見極め、診療時間を設定する必要があります。診療時間設定のカギは、開業している場所の地域性を考えることが重要です。

地方では早朝診療が狙い目

地方では、9時~5時診療、土曜日は午前中、日曜・祝祭日が休みというパターンが主流を占めています。農村部では、早朝診療を実施している医院もあります。患者が農作業へ行くことを考え、診察開始を仕事に出る前の午前6時~7時としています。こうした地域は、一般に高齢化が進んでいるため、早朝診療は、朝が早いお年寄りの患者にとっても好都合です。医院にとっても、休診になる午後の時間帯を利用して、在宅の寝たきり老人などに対する訪問診療や訪問看護ができるメリットもあります。

地方にある診療所にとって、診療時間を決める際には、その地域にいる高齢者の生活スタイルを的確に把握し、それに合わせた診療時間を設定する必要があります。

住宅地で望まれる夜間診療

住宅地の場合は、昼間人口と夜間人口の違いを考慮する必要があります。通勤・通学者が多い住宅地では、昼間は学校や会社に行くため地域外へ出ている人が多く、9時~5時の診療時間では、人口が一番少ない時間帯が診療時間となってしまいます。こうした医院に勧めたいのは、午後の診療時間の工夫です。学校帰り、会社帰りの患者が来院しやすい時間帯を狙って、診療時間を設定すればよいでしょう。具体的には、午後の診察開始は、通学者を狙って午後3時~4時ぐらいとする。そして終了時間は、通勤者層に配慮し、夜の7時~8時頃とします。

ビジネス街は昼休みに留意

ビジネス街や繁華街は、住宅地域とは逆に、昼間の人口が多いところであり、働きに来る人々が患者になり得ます。こうした場所では、通常テナント診療所となることから、入居したビルの開館時間が問題になります。それによっては、思い通りに診療時間を設定できないこともあります。

会社員が中心であることを考えると診療開始時間を早くする必要はありません。午前は10時~11時で十分です。むしろ工夫が必要なのは、お昼の時間帯です。会社に勤務しているOLなどは、昼休みの間に来院することが多いからです。したがって、医院は、会社の昼休みが終わる午後2時ごろまで、診療を続けた方がよいでしょう。中には、職員には交代で昼休みを取らせ、午後6時の診療時間が終了するまで、休みなく診療をおこなっている診療所もあります。

診療所の立地を考えにいれて診療終了時間を午後8時と遅く設定する医院もあります。

「診療科目による工夫」

立地のほか、診療科目によっても診療時間の工夫が必要になります。今回は、内科系、外科系、小児科に分けて、それぞれ診療時間設定のポイントを説明します。

内科系

通常の外来診察を始める前に、検査だけを実施している診療所があります。特に、消化器内科ではこうしたところが多いです。胃透視や内視鏡検査など、検査前の食事が禁止される検査を行うからです。

又、会社員が成人病健診の一環として、こうした検査をうけやすいように配慮し、朝のうちに検査を行う診療所もあります。また、肝臓病や糖尿病などの慢性疾患患者を対象に、土曜日を中心とした予約診療を実施している診療所もあります。病状に大きな変化が見られない慢性疾患の患者とって、仕事で忙しい平日に医院に行く時間を取られるのは、できれば避けたいことです。こうした慢性疾患の患者にとって、仕事に影響せず待ち時間なしで診療を受けられるのは、大きなメリットになります。

外科系

無床診療所では、大がかりな手術まで実施するところは少ないが、小手術や処置などに関して、1週間のうち特定日の午後に集中させて行う診療所があります。ほとんどは、医師1人で診療にあたっているため、診療時間中に小手術などが入れば、他の外来患者を待たせることになってしまいます。手術・処置の日を特定すれば、こうした事態を防ぐことができます。

また、整形外科では、患者が一度に集中しないように、リハビリの時間帯を、診療時間の前後にずらして実施している診療所もあります。これらはすべて、「患者を待たせない」という観点に立った診療時間の設定であり、患者サービス向上に直結するのです。

小児科

産婦人科と同様、出生率の低下などから患者の確保が難しい現状に直面しており、様々な面で特徴を出そうとしている医院が多い。当然、診療時間もそのための検討対象になります。

小児は急に発病することが多く、夜間・休日に具合が悪くなることも少なくない。したがって、本来なら、24時間365日対応、つまり年中無休で診療に当たることが、患者とその親にとっては最も好ましい。しかし、現実問題としては無理な話です。その代わり、最低限、夜間・休日でも連絡がつくようにしておく必要があります。学校も週休2日制ですから、土曜診療の実施も患者を増やすために役に立ちます。特に、子供の患者が多い耳鼻咽喉科や皮膚科などでも検討に値します。

最近では、予約を行っている医院もあります。小児科では急な発病が多いことから、予約制の導入は難しいのではないか思われるが、意外に好評のようです。

その理由は、待ち時間がぐんと短くなるからです。大人と違い、子供は長時間じっと待っていられない。親にとっても、余計な時間を費やさずに済むというメリットがあります。

「スタッフの確保にネックも」

診療時間及び診療日の見直しを行おうとする場合に、まず考えるべきことは、先にも触れたように、地域の患者ニーズに合っているかどうかを再検討することです。

患者が通院しやすいのはどのような時間帯かを考えれば、開始時間を早くすればいいか、終了時間を遅くすればいいのか、それとも、土曜・日曜日の診療を実施すればいいのかが、はっきりしてきます。しかし、診療時間の設定を具体的に見直そうとすれば、様々な問題に直面することがあります。

一つはスタッフの問題です。医院のスタッフは主として女性ですから、朝早い時間に出勤したり、夕方遅くまで残ったり、あるいは休日出勤がある職場が嫌われることが多いです。

患者にとって便利なようにと考えて診療時間を見直したために、スタッフが集まりにくくなることもあります。そうなると、早出や休日勤務は交代で行う必要が出てきます。こうした勤務体制は、労務管理を難しくする上、人件費高騰も招きかねない。したがって診療時間見直しの前には、中心となるスタッフを確保し、その理解を得ておく必要があります。もちろん、それなりの手当を支給することも不可欠になります。

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