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第36回 医院開業の基本とポイント(3)

12月を向かえ、雪もつもり根雪になりつつあります。朝夕については冷たい風と厳しい寒さが身に沁みる季節なりました。又、年末を向け日々忙しい時期を迎えますが健康に注意をしたいものです。

前回は施設及び診療形態について説明をしました。今回はソロ診療とグループ診療がありますがグループ診療について説明をいたします。

グループ診療の基本とポイント

診療所の開設は基本的には医師1人の診療です。しかし、最近ではグループ診療と言われて来ています。基本的な内容について説明したいと思います。

(1)グループ診療の定義

医療法上はグループ診療が存在しないし、定義づけもない。このためわが国では明確な定義や基準は定められていないが、唯一グループ診療研究会が次のように定めている。

  1. 複数の医師が同一の場所に集まって協力診療を行うこと。
  2. 医師は正式な契約により組織化されていること。
  3. 施設、設備、医療機器、医療協力者、諸システムを共有ないし共同利用すること。
  4. 収入や経費の配分はあらかじめ定められた方法によること。

(2) グループ診療の管理運営方法

グループ診療研究会によると、わが国で可能なグループ診療の管理運営方法は、次の3つのタイプに分類できるとしています。

1.パートナーシップ型

グループ診療の医師全員が対等な立場で知識、技術、労働及び資本を出し合い、利益、経費、損失も平等に分け合う管理運営方法です。パートナーシップ型は、グループ診療が普及して医師らのグループ診療に関する知識が豊かにならないと有効に機能しないでしょう。また参画する医師が多数になればなるほど、管理運営上の意思決定が遅くなります。

2.アソシエーション型

グループ診療の医師たちが管理運営のために少数の執行部を選出し、当該執行部に権限の一部を委任してグループ診療を管理運営していく方法である。アソシエーション型は魅力ある優れたリーダーシップを発揮する医師がいれば成功する形態です。

3.HSS(ヘルス・サービス・サポート)型

グループ診療の医師たちがHSSの法人組織とタイアップして、グループ診療を管理運営していく方法です。

HSS型は、パートナーシップ型やアソシエーション型とタイアップして管理運営していくものと、グループの各診療科が独立採算制でHSSとタイアップして管理運営していくものの2つのタイプに分けられます。HSS型を採用する場合、診療と管理運営とを分離する必要性とグループ診療の安定した継続性から考えると、わが国の現状では各科独立採算制が好ましいタイプと思われます。

(3)グループ診療の分類

グループ診療を諸基準により分類すると、次のようになります。

診療の種類による分類

  1. 診療科目の異なった医師がグループ化するもの
  2. 同一の診療科目の医師がグループ化するもの
  3. 前二者の混合でグループ化するもの
    ※3が最も適していると言われています。

医療法上と診療報酬支払方式の拘束力による分類

  1. 法的拘束力がある。
    (例)
    病院は医療法、または診療報酬支払方式などによる、法律的に認められグループ診療そのものであるといえます。又、医療法人の運営による経営の多角化を図るグループ診療もあります。
  2. 法的拘束力はないが、診療報酬支払方式の拘束力がある。
    (例)
    ・病院と診療所の連携
    ・診療所と診療所の連携
    ・医療法人などが運営する老人訪問看護ステーションなど
  3. 法的拘束力も診療報酬支払方式の拘束力もない。
    (例)
    ・医師会活動として取り組むグループ診療
    ・個人の努力によるグループ診療(例えば仲間が協力して行う24時間連携体制)
    ・クリニックビルに異なった診療科が集まって行うグループ診療方式など

(4)グループ診療のメリット、デメリット

グループ診療によるメリット、デメリットは次のとおりです。

メリット

  1. 診療の質の向上と維持が図れる
    協力診や対診の重視でこれらが円滑に行われること、検査の共同利用で豊富な検査が行われること。診療以外の業務をHSSに代行でき、診療に専念できます。
  2. 医師の経済効率がよい
    事務、検査、設備などの共同利用、PR、委託業務、健診などの共同事業、開業資金などの資金調達、医薬分業、診療圏の拡大等により、経済効率がよくなる。
  3. 医師は地域の保健、福祉活動に積極的に出向くことができる。
  4. 医療協力者は自身の専門業務に専念することができる。
    事務部門、検査部門看護部門、薬剤部門などが組織化されて役割分担が明確になります。
  5. 患者の利便性
    いろいろな診療科が病院のように集まっているので便利です。
  6. 患者は十分な信頼感や満足感をもてる。
    協力診や対診、検査の充実、医師の時間的余裕があるため、十分な対話やインフォードコンセントが得られます。
  7. 地域医療の向上に役立つ
    プライマリ・ケアの特性である近接性、包括性、協調性、継続性、責任性のすべての機能を高めることができます。

デリメット

  1. 医師の自由が制限されます。
    診療時間帯、物品調達、PRのしかた、設備機器の選定などにつては、グループで行動しなければならないため、医師の自由が制限されます。
  2. 医師間の競合性
    診療科が多くなればなるほど競合性は強くなる。
  3. 秘密保持
    HSSを設立した場合、特に患者や医師のプライバシーの漏洩が心配です。
  4. 人間関係が複雑になりがちです
    雇用関係の異なる者たちが一堂で活動していくので、人間関係の調整が必要となります。
  5. 行政上の制約
    現在では、グループ診療に関する医療法規がまったくありません。したがって、グループ診療の開設届は提出できず、各医師がそれぞれ開設届を提出することになります。また、共同利用の検査室や事務室の設置場所、検査室の管理者、検査技師の所属について疑義が生じやすいです。

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