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障害者新法、厚労省が原案示す

前回は社会保障と税の一体改革素案の中の社会保障の部分にスポットを当ててみましたが、その中で最も注目を集めているのはやはり障害者自立支援法に代わる新法でしょう。一体改革素案でも障害者施策は12年通常国会に法案提出と明記されており、制度改正は目前の出来事と言えます。しかし、先日発表された厚労省の新法原案は物議を醸し、紙面のトップ記事を大いに賑わすこととなりました。民主党が公約に掲げた自立支援法廃止は実質的には見送られ、改正という形になっていたからです。障害当事者からは「サギだ」との声も上がっているようですが、その中身はどうなっているのでしょうか。今回からは、障害者自立支援法が抱える問題点や改正までの経緯、そして厚労省原案の内容やそこから窺える方向性などを追っていきたいと思います。

【障害者自立支援法の問題点と改正までの流れ】

障害者自立支援法は多くの問題を抱えている、ということはよく言われていることではありますが、ではその問題とは具体的にどのようなものがあるのでしょうか? 障害者自立支援法の問題としてまず押さえておきたいのは障害者自立支援法違憲訴訟についてです。これは、それまでの収入応じた負担(応能負担)から、利用者1割負担である応益負担の実施により、高度な障害を持つ者の生存権を侵害しているとして起こされた訴訟であります。この訴訟受けて国は、応益負担が不適切であることを認め、早急な制度改正を約束することで原告と合意し、法廷での決着を待たずに和解がされています。その後、2010年6月には自立支援法の廃止と新法の制定が閣議決定され、改正に向けた本格的な動きが取られていくこととなりました。ここで、応益負担の違憲性が争われたのは、重度な障害を持つ者ほど自己負担が重くなり、それは生存権に反するという考え方が取られたからです。(もちろん福祉の概念にも反しています) この事例からも、障害制度においては通常の医療や介護とは一線を画した概念がある、ということが再認識されます。

こうして改正へ動き出した障害者自立支援法ですが、実は本当の問題というのは別のところにありました。前述した利用者負担の問題だけであれば財源配分を変えるだけで十分対処可能であり、法改正の必要はなかったでしょう。自立支援法が抱えていた本当の問題は他ならぬ『自立支援』そのものだったのです。さて、ここからは福祉の専門分野となっていきます。

障害者に対する自立支援は、作業所での労働と工賃で一定の制度として確立されていた様相もありました。しかし、自立支援法により、作業所を利用するにも利用料がかかるようになり、結果、利用者は工賃で得る収入よりも利用料が多くかかり働くことでお金が減るといった事態が生じてしまいました。そして、利用料が払えないため作業所を利用できなくなり、自立への道が遠のいてしまう、という本来の目的とは完全に逆行した結果すらもたらしてしまうこととなりました。これは自立支援法の致命的な設計ミスと言えるでしょう。では、全てを自立支援法の制定前に戻せばいいのかというと、そうでもありません。自立支援法は、結果としてうまく機能しませんでしたが、就労移行支援・就労継続支援というものを通し、障害者の社会適応を目的としており、隔離された施設と作業所での生活に終始させないという理念があるからです。そういう背景もあり、自立支援法は即廃止ということではなく、改正・新法制定という道筋が取られているのです。

自立支援法における『自立支援』が機能しなかった原因としては、応益負担による問題が大きいのも確かですが、社会における障害者の受け入れ態勢が不十分であったということを忘れてはいけないでしょう。障害者の受け入れる体制が整わないままに社会適応を推進しようとした結果、障害者の居場所を奪ってしまったのです。仮に、一般企業における障害者雇用制度等が充実していれば、就労支援は障害者にとって非常に魅力的なものとなり、自立への意欲も高まっていったのではないかと考えます。 障害者自立支援法に込められた意味をよく考えた上で、次回は新法原案と厚労省の掲げる将来像を考えてみたいと思います。

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